こんにちは!
FAITH(フェイス) 小川由佳です。
今回は、
なぜ人的資本経営が、昨今注目されているのか?
という点について書いてみたいと思います。
◆まず1つは、「人材は価値を生む存在であり、
人材に投資することは企業価値向上につながるもの」
と捉え直されているからです。
これは、前回の記事にも書いた通りです。
確かに、人材のもつ知識や技能、能力といった要素は、
モノである有形資本と異なり、拡大&発展させることができます。
人的資本経営に長けている企業は、
持続的に企業価値を向上させることが可能
ということになりますね。
加えて、私たちは今、
変化が激しく予測困難なVUCAの時代にいます。
そのような中、
付加価値を生み出し変化に適応していくためには、
人材からいかに新しいアイデアや創意工夫を
引き出すかという点がとても大切になってきます。
これも、人への投資が重要視される理由です。
◆もう1つには、世界的に、
人的資本に代表されるような無形資産の
重要性が高まっていることもあります。
無形資産とは、文字通り形を持たない資産のこと。
例えば、社員が持つスキルや知識、企業特有の技術、
開発した商品やサービスに生じる特許権や商標権などを指します。
産業構造の変化に伴い、企業価値に占める
無形資産の割合が年々高まってきました。
アメリカの代表的な株価指数の1つであるS&P500の、
企業価値に占める無形資産の割合の変化を見ると、2020年にいたっては、
企業価値の約90%を無形資産が占めるようになっています。
参考:COMPONENTS of S&P500 MARKET VALUE
S&P500の企業価値に占める無形資産の内訳
(※OCEAN TOMOのサイトに飛びます)
こうした流れの中、欧米では、
投資家等が企業価値を判断する際に、
有形資産を示した従来の決算書の情報だけではなく、
決算書には表れない無形資産も重視すべきだ
という声が挙がるようになりました。
これが、無形資産の1つである
人的資本の開示という動きにもつながっています。
2018年には、人的資本開示のガイドラインとなる
ISO30414が公表されています。
ちなみに、日本についていえば、
1989年では、世界時価総額トップ50社の内、
32社が日本企業でした。
一方、2023年には1月時点でトップ50社に
入ったのは47位のトヨタのみ。
2月の時点ではトヨタが52位となり
トップ50社に日本企業はありません。
量産型の製造業が強く、
有形資産の価値が高かった日本企業は、
企業価値が無形資産にシフトしてからは、
なかなか追いつけていないというのが現状のようです。
なお、世界的には、持続的な社会の実現を目指す中で、
ESG投資(Environment 環境、Social 社会、Governance ガバナンス)
を重視する流れが起こっています。
この流れにおいても、
ESGのうちの主にSに関連する「人的資本への投資」は、
企業の成長性を判断するうえでの重要な要素となっています。
まとめると、
企業が人材に対してどのような投資をしているのかが問われており、
それらを示していかなければいけない時代になった
のですね。
参考文献:
『人的資本経営まるわかり』岩本 隆(PHPビジネス新書)
『持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート』経済産業省
『人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0』経済産業省